スキルトレーニングの前、人間の身体としての前提③
シリーズでお届けしている前提のお話。
『スキルトレーニングの前、人間の身体としての前提①』『スキルトレーニングの前、人間の身体としての前提②』
に続き、いよいよバレエの動作スキルについて触れていこうと思います。
バレエは(この場合クラシックと定義します)、そのポジションの特異さゆえに、まずそこに意識のフォーカスが
向いてしまうことが取り組むときの特徴の一つとして挙げられます。
つま先を外側に向けた”アンドゥオール”というポジション。
それこそが、バレエをバレエたらしめる重要かつ伝統的なものなのですが、日常的な動作や姿勢とあまりに異なるため
「外に向いたつま先」に意識が持って行ってしまわれがちです。
もちろんその意識はとても大事でなくてはならないものなのですが、ここまでお話ししてきた「人間の身体としての前提」の上に
アンドゥオールも成り立つことを、決して忘れてはならないのです。
1・人間の身体であること
2・重力下にいること
この2つです。
「人間としての整った身体で正しく重力と向き合える」と、ざっくりとまとめて書きましたが
アンドゥオールはこの2つが極めて高次で行われて、はじめて成立していきます。
人間の身体として立ち、歩き、動作していること。
ここには構造面も機能面も含まれますが、構造が崩れている状態ある意味で運動するのが危険ともいえるので、
機能面を考えてみたいと思います。
例えばこれらの項目…
・呼吸
・筋緊張
・神経伝達
ナチュラルで無理のない呼吸ができているか?動きに伴って呼吸筋がはたらくか?
筋肉の緊張状態が適切であるか?どこかだけ緊張あるいは弛緩しすぎていないか?
各入力器官(目や耳、触覚など)からの情報伝達が正常に行われているか?自律神経系統のはたらきが適切であるか?
健康診断みたいな項目ですが(笑)これらがうまくはたらいていて、人間として身体の性能を発揮します。
ここから「姿勢」が導き出されて、自分が認識したカタチになることができます。
認識したカタチというのは、つまり「アンドゥオール」のこと。
まっすぐ立ち、そして股関節から外旋をさせて、結果としてつま先が身体の外側を向き、そのポジションを成り立たせるために
アンドゥオールをし続ける(=ムーブメント)を行うことで、つま先が外向きのまま動いていくことが可能になります。
この時、息が止まっていたり、筋肉の一部分だけが固まっていたり、アライメントが崩れていたりしたら
適切な姿勢を導き出せず、的確な関節動作が導けず、結果「アンドゥオール」というムーブメントを
正確にに導き出すことが難しくなってしまいます。
もちろん、最初は見て真似をして行うことから始まり、徐々に使い方を習得していくのですが、
身体の前提が崩れていると、修正をかけたときに身体が混乱をきたしてしまいます。
もっとも多いアンドゥオールについてのアライメントの崩れは、股関節が外旋しきらず下腿のみ外旋してしまっているけケース。
いわゆる”膝下だけ外向き=見た目の外旋”になっている状態です。
この状態で立っていると、股関節や膝関節にねじれが生じるだけでなく、足裏が床から浮いてきてしまったり、
足指が使えなくなってしまったり…と、様々な不具合が生じる可能性があります。
また足裏からの知覚(感覚の入力)が少なくなってしまうため、感覚機能の統合に変調をきたす危険もあります。
視覚で認識したカタチ、としては確かに「つま先が外を向いている」なのですが、アンドゥオールというムーブメントは
思っているよりも複雑かつエネルギーの必要なポジション。
身体の前提が整っていることが、まずはアンドゥオールを正確に導くための必要条件になるのです。
この「アンドゥオール」が成立して、ようやくバレエのスタート地点。
ここからがいよいよ動作の開始です。
アンドゥオールというムーブメントを保持したまま、あらゆる動作をこなすことを求められます。
当然、重力への拮抗も要素の一つになります。
アンドゥオールをしたまま、床反力を使う。
膝下だけで”見た目の外旋”をしていると、動き始めた途端、すぐに元の正中位に戻ってきてしまいます。
また、この方法だと股関節に力が伝わりにくいため、胴体部(体幹部)がかなり不安定になり、姿勢を保つことが難しくなります。
そうなると、2つ目のポイントである『重力下であること』、つまり床反力を身体が受け止められず、
仮に受け止められたとしてもかなりの割合でロスしてしまいます。(膝の方向に逃げたり、お腹に逃げたり…ect.)
動作が連続して行えない(ジュテ→タンルヴェなどの片脚踏切やポアントでのバロネなど)場合、
もちろん脚や足底の筋力不足も要因の一つですが、この「床反力」を身体がもらえていない、というケースも多いです。
それを「脚が弱いから」と短絡的に考えてしまうと、方向性がズレていってしまうこともあります。
真っすぐのモノを垂直に持ち上げるのはわりと簡単にできますが、ゆらゆらしたものを持ち上げるのは大変な上に
色々なところに緊張が走ります。
この「ゆらゆら現象」が身体の中に起きていて、ルルベの不安定さやジャンプ時の姿勢の崩れ、あるいはポアントでの
不安定さにつながっていることも少なくありません。
では体幹部の「ゆらゆら現象」を抑えるためにはどうしたら良いか?
原因がまちまちなので一概には言えないのですが、一つポイントになるのが『腹横筋』です。
腹横筋は別名コルセット筋とも呼ばれるほど、胴体部の安定を保つために大きな役割を果たしてくれる筋肉。
肋骨の下側から骨盤まで、ぐるりと一周、それこそ骨のない部分をコルセットのように内側から支えてくれています。
この筋肉が弱かったり固まっていたり、はたらきが悪くなっていると、背骨もきちんと立てることができず
結果として引き上げがうまくいかなくなってしまいます。
腹横筋がしっかりはたらくと、脊柱を支える多裂筋がはたらくため、脊柱を伸展していくことが可能になります。
特に胸椎部(胸のあたり)の伸展がうまく行えるので、後ろへのカンブレがスムーズにできるようになります。
「腹圧」という言葉を聞いたことのある方もおられるかもしれませんが、腹圧が保たれているというのは
まさにこの「腹横筋」が適切にはたらいている状態をさしています。
この状態が「床反力をもらえる」身体の状態、そして体幹部の安定性から骨盤付近の筋群の活性により、
結果、股関節が自由に動き、”アンドゥオール”を導き出せるようになります。
「立つ」ことそのものすら、難しいバレエ。
それは「バレエ的に立つ」のではなく。「人間として正しく立った上で、バレエスキルを上乗せする」ということ。
言うまでもなく、動作はその先の領域になります。
…と考えていくと、やるべきことが山積みになっている感もありますが(笑)
「人間としての前提を整える」ことは、バレエに限らず日常生活においても健康を保つ上でも非常に重要な観点です。
以上、3回にわたり長々と書いて参りましたが、、少しでも伝わっていれば嬉しく思います。
皆さんのバレエライフ、そして日々の生活がより充実したものとなりますように!!
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『スキルトレーニングの前、人間の身体としての前提①』『スキルトレーニングの前、人間の身体としての前提②』
に続き、いよいよバレエの動作スキルについて触れていこうと思います。
バレエは(この場合クラシックと定義します)、そのポジションの特異さゆえに、まずそこに意識のフォーカスが
向いてしまうことが取り組むときの特徴の一つとして挙げられます。
つま先を外側に向けた”アンドゥオール”というポジション。
それこそが、バレエをバレエたらしめる重要かつ伝統的なものなのですが、日常的な動作や姿勢とあまりに異なるため
「外に向いたつま先」に意識が持って行ってしまわれがちです。
もちろんその意識はとても大事でなくてはならないものなのですが、ここまでお話ししてきた「人間の身体としての前提」の上に
アンドゥオールも成り立つことを、決して忘れてはならないのです。
1・人間の身体であること
2・重力下にいること
この2つです。
「人間としての整った身体で正しく重力と向き合える」と、ざっくりとまとめて書きましたが
アンドゥオールはこの2つが極めて高次で行われて、はじめて成立していきます。
人間の身体として立ち、歩き、動作していること。
ここには構造面も機能面も含まれますが、構造が崩れている状態ある意味で運動するのが危険ともいえるので、
機能面を考えてみたいと思います。
例えばこれらの項目…
・呼吸
・筋緊張
・神経伝達
ナチュラルで無理のない呼吸ができているか?動きに伴って呼吸筋がはたらくか?
筋肉の緊張状態が適切であるか?どこかだけ緊張あるいは弛緩しすぎていないか?
各入力器官(目や耳、触覚など)からの情報伝達が正常に行われているか?自律神経系統のはたらきが適切であるか?
健康診断みたいな項目ですが(笑)これらがうまくはたらいていて、人間として身体の性能を発揮します。
ここから「姿勢」が導き出されて、自分が認識したカタチになることができます。
認識したカタチというのは、つまり「アンドゥオール」のこと。
まっすぐ立ち、そして股関節から外旋をさせて、結果としてつま先が身体の外側を向き、そのポジションを成り立たせるために
アンドゥオールをし続ける(=ムーブメント)を行うことで、つま先が外向きのまま動いていくことが可能になります。
この時、息が止まっていたり、筋肉の一部分だけが固まっていたり、アライメントが崩れていたりしたら
適切な姿勢を導き出せず、的確な関節動作が導けず、結果「アンドゥオール」というムーブメントを
正確にに導き出すことが難しくなってしまいます。
もちろん、最初は見て真似をして行うことから始まり、徐々に使い方を習得していくのですが、
身体の前提が崩れていると、修正をかけたときに身体が混乱をきたしてしまいます。
もっとも多いアンドゥオールについてのアライメントの崩れは、股関節が外旋しきらず下腿のみ外旋してしまっているけケース。
いわゆる”膝下だけ外向き=見た目の外旋”になっている状態です。
この状態で立っていると、股関節や膝関節にねじれが生じるだけでなく、足裏が床から浮いてきてしまったり、
足指が使えなくなってしまったり…と、様々な不具合が生じる可能性があります。
また足裏からの知覚(感覚の入力)が少なくなってしまうため、感覚機能の統合に変調をきたす危険もあります。
視覚で認識したカタチ、としては確かに「つま先が外を向いている」なのですが、アンドゥオールというムーブメントは
思っているよりも複雑かつエネルギーの必要なポジション。
身体の前提が整っていることが、まずはアンドゥオールを正確に導くための必要条件になるのです。
この「アンドゥオール」が成立して、ようやくバレエのスタート地点。
ここからがいよいよ動作の開始です。
アンドゥオールというムーブメントを保持したまま、あらゆる動作をこなすことを求められます。
当然、重力への拮抗も要素の一つになります。
アンドゥオールをしたまま、床反力を使う。
膝下だけで”見た目の外旋”をしていると、動き始めた途端、すぐに元の正中位に戻ってきてしまいます。
また、この方法だと股関節に力が伝わりにくいため、胴体部(体幹部)がかなり不安定になり、姿勢を保つことが難しくなります。
そうなると、2つ目のポイントである『重力下であること』、つまり床反力を身体が受け止められず、
仮に受け止められたとしてもかなりの割合でロスしてしまいます。(膝の方向に逃げたり、お腹に逃げたり…ect.)
動作が連続して行えない(ジュテ→タンルヴェなどの片脚踏切やポアントでのバロネなど)場合、
もちろん脚や足底の筋力不足も要因の一つですが、この「床反力」を身体がもらえていない、というケースも多いです。
それを「脚が弱いから」と短絡的に考えてしまうと、方向性がズレていってしまうこともあります。
真っすぐのモノを垂直に持ち上げるのはわりと簡単にできますが、ゆらゆらしたものを持ち上げるのは大変な上に
色々なところに緊張が走ります。
この「ゆらゆら現象」が身体の中に起きていて、ルルベの不安定さやジャンプ時の姿勢の崩れ、あるいはポアントでの
不安定さにつながっていることも少なくありません。
では体幹部の「ゆらゆら現象」を抑えるためにはどうしたら良いか?
原因がまちまちなので一概には言えないのですが、一つポイントになるのが『腹横筋』です。
腹横筋は別名コルセット筋とも呼ばれるほど、胴体部の安定を保つために大きな役割を果たしてくれる筋肉。
肋骨の下側から骨盤まで、ぐるりと一周、それこそ骨のない部分をコルセットのように内側から支えてくれています。
この筋肉が弱かったり固まっていたり、はたらきが悪くなっていると、背骨もきちんと立てることができず
結果として引き上げがうまくいかなくなってしまいます。
腹横筋がしっかりはたらくと、脊柱を支える多裂筋がはたらくため、脊柱を伸展していくことが可能になります。
特に胸椎部(胸のあたり)の伸展がうまく行えるので、後ろへのカンブレがスムーズにできるようになります。
「腹圧」という言葉を聞いたことのある方もおられるかもしれませんが、腹圧が保たれているというのは
まさにこの「腹横筋」が適切にはたらいている状態をさしています。
この状態が「床反力をもらえる」身体の状態、そして体幹部の安定性から骨盤付近の筋群の活性により、
結果、股関節が自由に動き、”アンドゥオール”を導き出せるようになります。
「立つ」ことそのものすら、難しいバレエ。
それは「バレエ的に立つ」のではなく。「人間として正しく立った上で、バレエスキルを上乗せする」ということ。
言うまでもなく、動作はその先の領域になります。
…と考えていくと、やるべきことが山積みになっている感もありますが(笑)
「人間としての前提を整える」ことは、バレエに限らず日常生活においても健康を保つ上でも非常に重要な観点です。
以上、3回にわたり長々と書いて参りましたが、、少しでも伝わっていれば嬉しく思います。
皆さんのバレエライフ、そして日々の生活がより充実したものとなりますように!!
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